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福岡地方裁判所 昭和47年(行ウ)22号 判決 1972年9月07日

北九州市八幡区熊手三丁目三番一二号

原告

徳久秀幸

北九州市八幡区西本町四丁目一四番一六号

被告

八幡税務署長

右指定代理人

岡崎真喜次

山本秀雄

井口哲五郎

大神哲成

伊東次男

烏谷吾郎

主文

本件訴を却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一、当事者の申立

(原告)

一、被告が原告に対し昭和四六年六月二五日付でした原告の昭和四五年度分所得税の更正処分ならびに過少申告加算税賦課決定を取消す。

二、訴訟費用は被告の負担とする。

(被告)

一、本案前の申立

主文第一、二項と同旨

二、本案についての申立

(一) 原告の請求を棄却する。

(二) 訴訟費用は原告の負担とする

第二、原告の請求原因

一、原告は、昭和四五年一一月二〇日に原告所有の別紙物件目録記載の宅地三一五、七〇平方メートルを訴外横田盛に 二、五〇〇、〇〇〇円で譲渡したので、昭和四五年度分の所得税につき、右譲渡による短期譲渡所得を二五、四〇〇円とし、他の所得金額と併せて確定申告し、申告納税額二、四〇〇円を納入した。

二、被告は、右短期譲渡所得の算出につき原告が納入金額から控除した右土地購入資金の借入金利息四九一、九五六円及び売買諸経費八四、二四四円の合計五七六、二〇〇円のうち五一七、〇〇〇円については控除を認めず所得額を五四二、四〇〇円と認定し、昭和四六年六月二五日付で更に納付すべき所得税額を二〇六、八〇〇円と更正し、過少申告加算税額一〇、三〇〇円の賦課決定(以下本件処分という)をなした。

三、原告は同年七月二〇日被告に対し異議申立をしたが、棄却決定がなされ、同年一二月九日決定書謄本の送達を受けた。そこで原告は昭和四七年一月一〇日付の書面で国税不服審判所長に対し審査請求をなしたが、却下の裁決がなされ、同年四月五日裁決書謄本の送達を受けた。

なお、右審査請求が法定の期間経過後提出された事実は認める。

四、しかしながら、被告が金五一七、〇〇〇円について控除を認めなかつたことは違法であり、本件処分は取消されるべきである。

第三、被告の答弁

一、本案前の主張

本件処分についての異議申立に対する決定書謄本は昭和四六年一二月九日原告に送達されているから、審査請求は右送達の日の翌日から起算して一月以内の昭和四七年一月一〇日までになされなければならないところ、本件審査請求は同月一四日の通信日付印のある郵便によりなされたので、国税審判所長は法定の審査請求期限徒過の理由により却下の裁決をした。

よつて、原告の本件訴は、適法な審査請求を経ずになされた不適法なものであるから却下を免れない。

二、請求の原因に対する答弁

(一)  請求原因一項ないし三項の事実は認める。

(二)  同四項は争う。

第四、証拠

(原告)

一、甲第一ないし第三号証

二、乙号証の成立はいずれも認める。

(被告)

一、乙第一号証、第二号証の一、二。

二、甲号証の成立はいずれも認める。

理由

一、本件訴えの適否について判断するに、

(一)  いずれもその成立につき当事者間に争いのないこととその方式および趣旨から真正に成立したものと認められる甲第一ないし第三号証、乙第一号証、第二号証の一、二によれば次の事実が認められ、これに反する証拠はない。

本件処分についての異議申立に対する決定書謄本は、昭和四六年一二月九日被告から原告に送達され、これに対し、原告は昭和四七年一月一四日の通信日付印のある郵便により国税不服審判所長に対し審査請求をなした。そこで、同所長は、法定の審査請求期限徒過の理由により却下の裁決をした。

(二)  本件処分についての審査請求は、国税通則法七七条二項一〇条二項により、異議決定書の謄本が原告に送達された日の翌日から起算して一月以内にしなければならないわけであるが、原告の審査請求書は同年一月一四日、郵便によりなされたもの(同法七七条五項、二二条により郵便物の通信日付印により表示された日に提出があつたものとみなされる。)であるから、右審査請求はすでに法定の期限を徒過した不適法なものというほかなく、国税不服審判所長が期限徒過を理由に原告の審査請求を却下したのは正当である。そうすると、行政事件訴訟法八条一項但書、国税通則法一一五条一項本文、七五条一項一号、三項により、所得税に関する更正処分等の取消の訴は適法な異議申立及び審査請求を経た後でなければ提起することができないことになつている(なお本件においては国税通則法七七条三項に該当する事由はうかがわれない。)から、原告の本件訴えは、適法な不服申立(審査請求)を経ずになされたものというべきで、不適法として却下すべきことになる。

二、以上の次第であるから、訴訟費用につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 井野三郎 裁判官 妹尾圭策 裁判官 若林諒)

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